カンテを上手く組み込めないチェルシー
チェルシーに所属するエンゴロ・カンテは、16/17シーズンにレスターから加入以降、毎シーズンリーグ戦30試合以上安定して出場し続けている。
鋭い出足と圧倒的な運動量を駆使してボール脱出のスペシャリストとしてチームに君臨している。
また、18/19シーズンにはイタリア人サッリ監督の元、アンカーのポジションから一個前にポジションを上げ、攻撃面での進化も見受けられた。
そして今シーズンも怪我での欠場が増えたものの、コンデションが万全であれば、ランパード監督の信頼は厚く、必ずスタメンに名を連ねている。
試合に出場したカンテは依然ボール奪取と時折見せる飛び出しで違いを見せている。
ただ今シーズン感じたのは、カンテの能力自体に疑いはないが、それをチームとして活かせていないということ。それだけでなく、むしろ穴になってしまう瞬間も感じられる。
★固定できないシステム
今シーズンのチェルシーは主に3つのシステムを使用している。
アンカーを置いた4-3-3とダブルボランチの4-2-3-1、3-4-3だ。4-3-3の場合は、ジョルジーニョをアンカーにし、カンテはインサイドハーフで起用される。ダブルボランチを並べる時は当然カンテはボランチで出場する。
結論から述べると、4-3-3の時は私が考える問題は露呈しないことがほとんどである。
問題はダブルボランチの時である。
★カンテが出たスペース
カンテの長所は先程も記述したが、守備範囲の広さで、普通の選手がプレスにいけない場所でも詰めて奪いに行けること。
ダブルボランチで出場した時も、相手のアンカーや降りていく中盤を捕まえにいくわけだが、それが仇となってしまうことが多々ある。
下の図は今シーズンのプレミアリーグ第25節レスター戦の守備陣形の一部を表したものである。
降りていくマディソンを潰しに行っている場面で、この試合はマディソンだけでなく、チョードゥリーにも時折プレスに行っていた。
カンテが前に出ることで、一時的に真ん中がジョルジーニョ1人だけになってしまっている。
ジョルジーニョも真ん中を空けたくないので、カンテの場所を完全に埋めることはできない。
この状況だと縦パスを入れられるとフリーで受けられてしまう。あるいはロングボールを蹴られても、セカンドボールを拾えない。
例えば、ジョルジーニョがカンテの穴を埋めて、逆のサイドハーフが絞るみたいな約束事があればいいが、それがないので、穴ができてしまう。
カンテの対応は間違っていない。むしろ中盤でフリーにさせたらそれこそ展開されてしまうので、守備範囲の広いカンテが行くことは理にかなっている。
アンカーを置いた中盤3枚で戦うのであれば、カンテが前にでても真ん中が一人になるわけではないので、上手くスライドして対応できており、逆にそれがいい守備につながっている。
なぜ今シーズンいきなりそれが露呈したかといえば、ランパード監督が就任して、前線からプレスをかけるようになり、かつサッリの時と違いダブルボランチも運用することになったからである。
要するにシステムを頻繁に変える中で、カンテの守備範囲の広さを活かした戦術を構築できていないのである。
メイソン・マウントも台頭し、トップ下を置くシステムを使うのはありだと思うが、その時にカンテを使うのであれば、能力に任せるのではなく戦術を考える必要がある。
フランス代表でも、レスターに在籍していた時も、カンテはダブルボランチで躍動している。
カンテの抜群の守備力を活用しないてはない。
せっかく違いを作れる選手であるのに、少し歯がゆさもあったのチェルシーとカンテの感想でした。