サッカー 守備について適当に語るブログ

サッカーについて適当に書きます

過度期のマンチェスターダービー 11/12シーズン

 11/12シーズンのプレミアリーグと言えば、前年度にマンチェスターユナイテッドがCL決勝でペップバルサに2度目の敗戦を決して、黄金期の終わりが近づいていた時で、かたやマンチェスターシティはオイルマネーの力で徐々にプレミアの覇権を狙える位置に上り詰めていた時期である。

グーナーである私の視点で話すと、このシーズンはファン・ペルシーのラストシーズンで、初めて怪我なくシーズンを戦えたシーズンである。フルシーズン戦ったファン・ペルシーは実力を遺憾なく発揮し、初の得点王に輝いた。また、若かりしウィルシャーが台頭してきて、CLのバルセロナ戦では、当時の最強チーム相手に誰よりも躍動していた。

ちなみにこのシーズンは最終的にシティが最終節ロスタイムの劇的な逆転で優勝したシーズンでもある。

そんなシーズンの前半戦のマンチェスターダービーの感想を書きたいと思う。

 

 シティは夏にアグエロ、ナスリ等を補強して元々豪華なメンバーをさらに豪華にしてこの試合を迎えていた。

逆にユナイテッドは、キーパーがファンデルサールからデ・ヘアに代わり、ビディッチもギグスも怪我でシティに比べれば、スカッドは薄くなっていた。

 

★堅いシティ

久しぶりに見たが、この試合の第一印象はシティがメンバーの割に堅い試合運びであった。ユナイテッドホームでかつ監督はイタリア人のマンチーニで、当時のシティはビッククラブというよりはチャレンジャーの立場もあるという事も考慮しても、堅いなと思う。

ラインは低めに設定されており、前線は牽制するだけで、基本ハイプレッシャーはかけず、ブロックをしっかり作るディフェンスを行なっていた。中盤も時折ヤヤトゥーレがユナイテッドの中盤を捕まえに前に出ることはあるが、基本は最終ラインの前に陣取り、中を閉める守備を行なっていた。今のシティには考えられない形である。

また、最初の配置ではバロテッリが左のサイドハーフを行っていたが、守備が怠慢と見るやすぐにシルバを左にし、前線にポジションを変更させた判断も速かった。

当時のシティは自分達のサッカーより先にまず守備から入るチームであったということである。

結果的にユナイテッドはセンターバックボランチは比較的自由にボールを回せることになり、それが前半押し込めた大きな要因だと思う。押し込めたというか、ボールを持てていた原因。

 

★単調な攻め

ユナイテッドの両翼はナニとアシュリー・ヤングで基本的は横幅をとり、ボールを受けたら、ガンガン仕掛けていくスタイル。今でこそヤングはサイドバックウイングバックをやって、年齢的にもプレー的にもヤングではなくなっているが、昔のアストンビラ時代のヤングはウイングでとにかく仕掛けていくプレイヤーであり、この試合も果敢に仕掛けていた。

ユナイテッドはルーニーが気を利かして、いいタイミング真ん中で受けて起点を作り、そこからサイドに展開する攻撃パターンを多く発動していた。というかそれしかなかった。テベスベルバトフがいればもう一個真ん中でパスコースを作ることができるが、この試合はルーニーしかいなかった。ルーニーはボールを失わないし、展開することもできるので、一応形にはなる。ただコンパ二が必ずプレスに来るので、前は向けない。

まずかったのはせっかくセンターバックをおびき出せているのにその裏のスペースに走る選手が誰もいない。始めから隙間にポジションを取り、相手を困らせる選手もいない。とにかくルーニーからのサイドしかなかった。

スコールズがいた時は、これでも高精度の散らしができるので問題ないが、この試合はきつかった。

この次の年にユナイテッドは香川をドルトムントから獲得するわけだが、中盤と最終ラインの間で受ける選手を欲していたからこそだと思う。

 

★現在のシティの片りんを見せる

シティの攻撃は流動的であった。今ほど緻密なポジショニングを行っていたわけではないが、

味方が空けたポジション、相手が空けたポジションに入ってくる意識は高かった。例えば、後半ユナイテッドのセンターバックエバンスが退場した場面で、バロテッリとシルバのワンツーで抜け出したシーンが挙げられる。この場面はバロテッリがシルバに落として、喰いついてきたエバンスの裏のスペースをバロテッリ自らがついたことで生まれた場面である。不用意に喰いついたエバンスも悪いが、そのスペースが空くことがわかっていたシルバとバロテッリが流石である。

また、シティの3点目も綺麗な崩しであった。ユナイテッドが1人退場しており、スペースが空いていたことも考慮する必要があるが、それでもいい形であった。

中で受けようとしたミルナーに対して、ファーディナンドが喰いついてきて、その空いたスペースにバロテッリが入ってきたことで生まれた得点である、ミルナーもパサーのヤヤトゥーレもバロテッリファーディナンドが喰いつくことでスペースが空くことをわかっていたことが見受けられた。

このようにユナテッドに比べてシティの方が選手同士の連動性があり、多彩な攻撃を行っていた。

当時はポジショナルプレーの概念なんて当然ないので、即興な動き出しではあるものの、スペースを作る、入ってくる等の意識はシティにはあった。

 

★まとめ

結果的にこの試合は6−1でシティは勝つことになり、なんとも衝撃的なスコアである。当時はマンチェスターの時代が変わる的な雰囲気で、それはないだろうって思っていたが、久しぶりに試合を見ると、案外そんなことあった試合であった。

空いたスペースに誰かが入ってくる連動性がユナイテッドにはなくて、シティにはあった。それが勝負を分けた全てではなく、仮にユナイテッドが退場者を出していなかったら、持ち前の勝負強さで追いついたかもしれないが、ユナイテッドのサッカーの内容自体は厳しかった。

サッカーは、年々進化しており、特にプレミアリーグでは隙間のスペースの重要性が認知され始め、それを封じるために各ライン間の守備が狭くなっていた時である。その狭い守備を攻略するためには、連動した動きが必要である。

それらを持つもの、持たざるものが顕著に出て、丁度両チーム過度期にあったダービーであったのかと、改めて感じた試合である。このDAZNの過去の試合を放送してくれる企画は、当時のことを思い出すだけでなく、サッカーの流れの変化を知ることができてとても勉強になる今後も時間が許す限り見ていこうと思う。