SBからCBへのコンバートについて その1
センターバックの選手が、守備の強化等を目的として、サイドバックで使われることは多々ある。今シーズンのプレミアリーグだけでもスパーズのフェルトンゲンやタンガンガ、アーセナルのソクラティス、チェルシーのトモリが本来はセンターバックの選手であるが、チーム事情によりサイドバックで起用されている。昔チェルシーで一時代を気づいたイバノビッチは元々センターバックであったが、サイドバックで起用したのが思いの外当たり、全盛期をサイドバックとして過ごした選手である。
目的として一番多いのはやはり守備面での強化でその次に、チームのサイドバックが足りなくなり、スクランブル的に使われるケースである。
いずれにしても、攻撃面では本職の選手ほど期待できないが、守備面ではそつなくこなせることができるため、比較的多くのチームでやっているところを見ることができる。
ただその逆、要するにサイドバックからセンターバックのコンバートに関してはあまり見られない。
サイドバックに起用される選手の多くはは敏捷性に優れる反面、上背はそこまでなく、センターバックに必要とされる屈強さが足りないことが多いため、起用を渋る気持ちは理解できる。
サイドバックの選手の機動力や足元のスキルを活かしての起用という意味で本来サイドバックの選手が3バックのセンターバックにコンバートされるパターンは多々ある。
コンテ時代のチェルシーがアスピリクエタをこのポジションにコンバートしていたし、最近ではマンチェスターユナイテッドのルーク・ショーが起用さている。シティのウォーカーも一時使われていた。
ただ同じセンターバックであるのに3バックの時はあっさりと起用するのに対して、4バックの時のコンバートはあまり見られない。そのパターンで成功しているのはセルヒオ・ラモスとアヤックスのブリント、最近だとバイエルンのアラバが挙げられる。
少し前に、グアルディオラがサニャやコラロフを、ヴェンゲルがドゥビシーをセンターバックで起用していたがいずれも微妙であった。
ではなぜ、4バックのセンターバックのコンバートは難しいのかを考察したいと思う。
★ポジショニング
サッカー漫画のアオアシで主人公の青井葦人がサイドバックにコンバートされた時に、最初に教わるのが「絞る」ということである。
3バックでも4バックでも5バックでもディフェンスラインを形成する上で、一番大切なのはボールと味方が動いた時に、横の選手間の距離を埋めるということ。それをアオアシでは「絞る」と表現されいる。
この「絞る」でどう変わるかというと、サイドバックはこの選手間の間がセンターバックの間の一箇所しかないのに対して、センターバックはサイドバックの間と相方のセンターバックの間を二ヶ所見なければいけない。
当然この選手間のスペースにパスを出されたくないし、できれば相手に走られたくもない。そのためにはこまめにポジションを調整して、相手にそこは消されてダメだなと思わせなければいけない。
サイドバックとセンターバックだとこの埋めなければいけないスペースや気を使うことが劇的に変わるので、相当なバランス感覚が要求される。相方のセンターバックとの間を詰め過ぎれば、サイドバックとの間が空くし、逆も然り。
ここの感覚が劇的に変わるので急造でいきなりセンターバックをやるのは難しいし急だとどうしても慣れない。
センターバックがスクランブルになったときに、ボランチの選手がコンバートされるケースが多いのは、中央でのバランスをとる視点に慣れていることが考えられる。
一方、3バックor5バックの場合真ん中にもう1人選手がいるので、選手間の距離が近くなっており、横のバランスにそこまで気を使う必要がないので、思い切って相手を潰しに行くことができる。要するに守備力に定評がある選手だと、サイドバックの時と同じような感覚で守備を行うことができるため、比較的急造であったとしてもすぐに対応できるというわけである。
その2に続く